「釣り舟草」の思い出
山間の日陰に群生する紅紫色の花で柄に垂れ下がった帆掛け船を釣り下げたように見えることから
名づけられたそうであるが、私にはフグ提灯の様にも見えました。
中学生の頃、植物採集で見つけたもっとも印象に残る花で、その特異な形が町中育ちにとって、
山野草という言葉も知らない中学生にとっては高山植物でも見つけたかのように興奮したものです。
町を離れて野に山に・・・・山野を歩き回る楽しみを知り始める頃に出会った花として、
また友達と永平寺まで足を延ばしたことの喜びと共に、
群生している釣り舟草の花が永平寺の谷間をピンク色に染めていたのが思い出されます。
武周ヶ池の『釣り舟草』
大学時代に
六所山登山コース開発で何度も来た武周ヶ池を久々に訪れ、
ン十年ぶりにもかかわらず時間が止まっているかのような同じ光景に接しタイムカプセルの蓋を
開けた様な気持ちを味わった。
その湖畔の山陰に群生しているピンク色の釣り舟草にまじり黄色い釣り舟草の花を見て、
昔々中学生の時に名も知らぬままに見覚え脳裏に残像していたその花が呼び覚まされた様に
一瞬不思議な心象風景の世界が展開して行く秋の昼下がりでした。
静かな湖畔、一番奥には懐かしい六所山、いつまでもそのままでいて欲しいと願いつつ。。
・・・・・・解説・・・・・・
「釣船草」・・・・柄に垂れ下がった花の姿が帆掛け船を釣り下げたように見えることからの名である。
各地の渓流のほとりや山野の湿ったところに多く見られる。
高さ50センチほど。初秋の頃直立した柔らかい 茎の先に花茎を伸ばし、径3センチ ばかりの紅紫色の花を
数個づつ集めて開く。
花の下に3つのガク片があり、うち下方の一つは筒形で後方に突き出して、とがった先端は巻いている。
細い紡錘形の果実は、ホウセンカ(鳳仙花)のように、塾するとはじけて種を飛ばす。福井新聞より
ツリフネソウ Impatiens textori Miq 釣り舟草 touch-me-not balsam(私に触れるな)
〜熟した朔果が手を触れると種をはじき飛ばすところから。
悠久にして不動の山、開発による便利さの享受と引換に人為的に改造整形された山、
年とともに変わる、人それぞれの山、更に歴史の中で位置づけられた山。
変わらないものと、変わるもの、変えて良いものと、変えてならないもの、
それを山から学んでいるようなものです。